TEXT「フォークナーとの対話」 2018年末

今年九月の地震以降、TEXT「A Passion Play」 –暴力と舞台装置- も、書く気が失せてしまっている。が、いずれ再開したいと思っている。

以前のTEXTで「フォークナーとの対話」という題で何篇か書いたが、改めてフォークナーの作品に触れると、様々な言葉に勇気づけられる。『日本の若者たちへ』と題された1955年のエッセーを藤平育子の訳で以下に抜粋する。

 

『人間は強靭であり、何ものも本当に何ものも、戦争の悲しみも、失望も絶望も、何ものも人間が生き続けるほど長くは続かないだろう、と。また、もし努力をするならば、つまり、人間と希望とを信じる努力を惜しまないならば、すなわち、すがるべき杖を探すための努力ではなく、希望と人間の強靭さと忍耐力を信じることによって自分の足で真っ直ぐに立つ努力をするならば、人間はあらゆる苦悩を乗り越えられるだろう、と』。

 

これは戦後十年経った日本の若者たちの感情を理解し、フォークナーが、自国の、それより古い戦争の後の、十年後の若者の感情に訴えたに違いない誰かが、励ましたであろう言葉を、引用するようなかたちで書かれたものだ。

我々が九月に体験したこれまで見たこともないような光景など、これらは非日常であるから、我々が生き続ける間、ずっと続くわけではなく、多くの人はやがて忘れてしまう。しかし我々は、今も苦しんでいる人たちのことを思わなくては、そして各自が出来ることを、そして役目を果たす努力を怠らないようにしなくては、人は真に助け合うことを放棄してしまうのではないかという恐れを感じてしまう。戦争のような大きな出来事でなくても、頻発する自然災害に見舞われる現代の我々を慰藉し、鼓舞する言葉として改めてフォークナーの言葉が身に染みる。